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RIEDEL MediorNet MicroN活用事例 ~映像・音声信号を一元管理し、シンプルかつ効率的に構築可能な最新の伝送システム~

2025年4月2日から東京・お台場で開催された「F1 TOKYO FAN FESTIVAL 2025」にて、RIEDELの映像・音声伝送システム「MediorNet MicroN」が採用されました。
本イベントでは、三重県・鈴鹿サーキットで行われた「F1日本グランプリ」のパブリックビューイングをはじめ、F1ドライバーによる特別走行イベント、人気アーティストによるライブステージなど、多彩なコンテンツが展開。お台場の会場全体がモータースポーツとエンタメの熱気に包まれました。
今回、ヒビノ株式会社 ヒビノビジュアル Div.とヒビノサウンド Div.協力のもと、特設会場に点在する4拠点に「MediorNet MicroN」を配置し、各拠点を光ファイバーで接続。映像・音声・制御信号を一元的に管理することで、ケーブルの本数や人的リソースを大幅に削減し、トラブルリスクを最小限に抑えた安定運用を実現しました

 

 

■F1 TOKYO FAN FESTIVAL 2025について

名称:F1 TOKYO FAN FESTIVAL 2025
日時:2025年4月2日(水)プレイベント/4月4日(金)~6日(日)本開催
会場:東京都江東区青海NOP区画 お台場特設会場
公式サイト:F1 TOKYO FAN FESTIVAL 2025

■RIEDEL使用機材リスト

ブランド 製品 カテゴリー 数量
RIEDEL MediorNet MicroN 映像・音響・制御信号伝送ルーター 5
RIEDEL Boleroベルトパック ワイヤレスインカムシステム 20
RIEDEL Boleroアンテナ ワイヤレスインカムシステム 2
RIEDEL Artist デジタルマトリクスインターカム 1
RIEDEL SmartPanel 有線インターカムパネル 1

■RIEDEL MediorNet MicroNとは?

MediorNet MicroN(以下MicroN)は、ソフトウェア定義型の高密度信号伝送インターフェース。1Uのコンパクトな筐体に、映像・音声・データ信号の処理、ルーティング機能を搭載したAV&C伝送プラットフォームです。高品質な映像信号を非圧縮のまま光ファイバーにまとめてリアルタイムに伝送・ルーティングが可能で、セットアップや撤収時間の短縮はもちろんのこと、急な入出力の変更や追加にも簡単に対応できます。単体利用はもちろん、複数台の連携により分散型ルーター、マルチビューワー、IPネットワーク間のブリッジなど多用途に対応可能です。


今回のシステムで全5台のMicroNの電源がONになった状態。
電源ONになり、各筐体が接続されるとTopology筐体間に緑のラインルーティング接続されている信号の右側にはコネクションマークが表示されます。

MicroNインターフェース入出力構成

  • 3G/HD/SD-SDIビデオポート×24(12入力/12出力)
  • MADIポート×2(最大128音声チャンネル)
  • 1Gイーサネットポート×1
  • 同期リファレンスI/O×2
  • 10G SFP+高速ポート×8(合計80Gのネットワーク容量)

※詳細:MediorNet MicroN 製品情報


BASEに配置されたMicroN本体。冗長性確保のため2台設置されています。

■お台場会場のシステム構成

お台場会場では、以下の4拠点にMicroNを設置。BASE拠点を中心に、光ファイバーで接続してネットワークを構築しました。

  • BASE:全体のハブ拠点。各拠点との接続および鈴鹿との信号中継も担当。冗長性を担保するためMicroNを2台設置。
  • FOH:アーティストライブ用ステージ。音響チームが常駐。
  • Village:F1日本GPのライブビューイングエリア。映像チームが常駐。
  • VIP:来賓向け観覧エリア。スタッフ常駐なし。

最大距離はVIP~BASE間の約300m。効率的なネットワーク構築により、迅速な設営と安定運用を実現しました。 各拠点は光ファイバーで接続されているため、急な信号の入出力の変更時にもソフトウェア上で設定変更を行うことができます。音声信号はSDI映像信号から自由にエンベデット/ディエンベデット可能で、こちらもソフトウェア上で切替できます。



東京国際クルーズターミナル駅(ゆりかもめ)から見た会場全景

■MediorNet導入のメリット

  • 高品質の映像伝送:3G/HD-SDIの映像信号を非圧縮のままリアルタイムに伝送・ルーティング。
  • システムの簡素化:映像信号の音声をエンベデッド/ディエンベデッドが可能(標準搭載機能)。ケーブル削減とトラブルリスクの低減を両立。
  • 高い拡張性:1U筐体で豊富な入出力に対応。伝送だけでなくルーティングが可能でスイッチング機能も装備。
  • 柔軟な運用性:PCソフトウェアから視覚的に設定・管理可能。急な構成変更にも即応。
  • 効率的な監視:1Gイーサネットポートで拠点間を直通接続。遠隔監視も実現。

拡張性・柔軟性に優れていることに加えて、規模が大きく複雑な伝送システムも極めてシンプルに構築することができるため、周辺機器やケーブルなどの機材のみならず、人的リソースも効果的に削減。複雑なシステムも少ない人数で安定して運用することができます。分散型ルーターであるMicroNは、接続されているすべての筐体が設定情報を保有しているため、どの筐体からでも設定にアクセス・変更が可能です。


画面中央のディスプレイでMicroNに接続されている信号をマルチビューでモニター。
MicroNのマルチビューアー機能でモニターする画面のサイズやレイアウトは自由に調整が可能。

本イベントでの具体例:

  • FOHからの音声信号と、Villageからの映像信号をBASEで組み合わせて鈴鹿サーキット側へ送出。
  • 「VIP」エリアに設置されているアンプのステータスを「FOH」から監視できるようにしたことで、配置する人員を削減。

BASEに設置されたMicroN。上段がリダンダント用、下段がメイン 非圧縮のHD-SDI映像信号を入出力し、各所にルーティング。 VIPに配置されたラック。 MicroNのイーサネットポートを利用してモニタリング。急遽追加で映像を出力したいという要望にも直ぐに対応可能。


BASEに設置されたMicroN。上段がリダンダント用、下段がメイン。
非圧縮のHD-SDI映像信号を入出力し、各所にルーティング。


VIPに配置されたラック。
MicroNのイーサネットポートを利用してモニタリング。急遽追加で映像を出力したいという要望にも直ぐに対応可能。

ワイヤレスインカムBoleroの活用について

本イベントでは、Boleroベルトパック20台を使用しました。充電器(BL-CHG-1005-R)によりBASEですべてのベルトパックを集中管理し、監視モニターで充電ステータスやヘッドセットマイクのゲインも確認。各ベルトパック回線には名前が設定されており、視覚的な発信者識別も容易です。
お台場周辺をF1車両が走行するイベントの際には、会場周辺の道路までスタッフの行動範囲は拡大し、また多くの来場者がいる状態でしたが、Boleroを使用することで離れた場所でも問題なくクリアな音声でコミュニケーションを可能にしました。


左:会場内に設置されたBoleroアンテナ 右:ラックに収められたMicroNとBoleroベルトパック

活用シーンのご提案

本イベントでMediorNet MicroNを中心とした伝送システムの構築・運用を担当した一般社団法人スタジオデザイン協会の小杉様に話を伺いました。


「MicroNは非常に柔軟性が高く、事前にシステム要件をしっかり整理しておけば、現場でのセットアップは極めてスムーズです。イレギュラーにも対応できる懐の深さはとても頼もしいと感じています。
私が特に評価するのはシステムのシンプル化によるトラブルリスクの低減です。ケーブル等の機材の削減により人的リソースも抑えることができる点も大きなメリットです。一方で注意するのは、光ファイバーの抜け落ちや断線など物理的な点です。熱換気用ファンの目詰まりも注意が必要ですが、定期的なメンテナンスで避けられます。事前の準備さえできていれば、ハード的なトラブルはほとんどありません。

 


BASEテントにて。一般社団法人スタジオデザイン協会の小杉様。

強いて言えば、MicroN本体にはボタンやスイッチが一切なく、すべてPCでの操作になる点については好みが分かれるかもしれません。しかし、UIは直感的で扱いやすく、必要な項目はすべてモニターで確認できるので問題はありません。BNC端子が密接しすぎて抜き差ししにくいのは唯一の難点と言えるかもしれませんね。ただ、別途パッチを使う方法もあるので物理的に改善は可能です。


BASEテントの様子。

MicroNの名の通り、1Uという小さい筐体にたくさんの入出力と機能が詰め込まれた製品です。このサイズで電源が標準でリダンダントな点には感心します。
今回はイベント会場での使用でしたが、実際には複数の控室や会場がある施設やなどの固定設備への導入もおすすめできる製品です。最小構成からスタートして、段階的に拡張できる点も魅力。MicroNの持つ"無限の可能性"を、ぜひ多くの現場で活用いただきたいと思います。」

■映像と音声の協業により実現した効率的なシステム構築

本イベントでは、映像をヒビノ株式会社 ヒビノビジュアル Div.、音声をヒビノ株式会社 ヒビノサウンド Div.がそれぞれ担当しており、両部門の密な連携のもと、最適なシステムとしてRIEDELの伝送ソリューション「MediorNet」が採用されました。選定の背景について担当者にお話を伺いました。

ヒビノビジュアル Div. Visual Sports Event 部長 岩崎俊也 氏 「私が初めてMediorNetを体験したのは、数年前に東京で開催された国際的スポーツイベントでした。会場内の各セクションの信号を一元的にこのシステムに載せてネットワークを構築しており、その柔軟性と効率性に大きな衝撃を受けました。
使う可能性のあるすべての信号をあらかじめMediorNetに接続しておけば、必要なときに、どこからでも簡単な操作で信号を呼び出したり切り替えたりできます。特に映像の立場から見ると、音声信号のエンベデッド/ディエンベデッドが可能な点も非常に魅力的です。トータルで考えたときに、他にはない効率性を備えたRIEDEL独自のシステムだと感じています。
日本では、映像・音声・照明がそれぞれ異なる業者により担当され、ネットワーク構築に必要なケーブルも個別に敷設することが一般的ですが、この体験から、いつか自分の案件でも使いたいと考えており、今回ようやくその機会が実現しました。」

ヒビノサウンドDiv. PA課 鍋島 久美子 氏 「今回のイベントでは、鈴鹿とお台場を結んで中継を行いましたが、送出する音声を切り替える際にも、私たちが直接操作する必要はほとんどありませんでした。Boleroでネットワーク担当者に一言伝えるだけで対応できてしまう――これは非常に画期的でした。
本来ならすべてのチャンネルを卓に立ち上げて対応すべき場面でも、MediorNet側の操作だけで簡単に音声・映像を切り替えることができます。ただし、国内ではまだこのシステムの認知度が高くなく、インフラ部分の操作に不安を感じるスタッフが多いのも事実です。従来通り、卓でフェーダー操作をする方が確実という考えが根強くあります。
それでも、海外ではすでに一般的に使用されているシステムであり、実際に運用の効率化と安全性を実感している立場としては、今後、日本でも着実に導入が進んでいくと考えています。」

再び 岩崎 俊也 氏
「日本のイベント・コンサート分野では、テクニカルセクションのインフラを専門で担う部門がないため、音響・映像・照明それぞれが個別にケーブルを引く体制が一般的です。もしこの部分を一元管理できれば、システムは大幅にシンプルになり、効率化だけでなくコスト削減にもつながります。
実際、今回のイベントではVIPルーム向けに急遽異なる信号を送出する必要が生じましたが、MediorNetを導入していたことで、簡単な操作のみでごく短時間のうちに対応できました。運営側にとって、この柔軟性と即応性は非常に大きなメリットです。」
イベント市場は今後、規模の拡大のみならず、独自性を求めてますます多様化していくことが予想されます。そうした中で、RIEDELの伝送システム「MediorNet」は、大規模かつ複雑なイベント現場において、他に比類のない効率性と柔軟性を提供するソリューションです。