HOME >  TRIAD-ORBIT  >  ユーザーレビュー  >  ブログトップに掲載  >  レコーディングエンジニア古賀健一さんに聞く TRIAD-ORBITの魅力
レコーディングエンジニア古賀健一さんに聞く TRIAD-ORBITの魅力
TRIAD-ORBITのスタンドをこよなく愛してくださっているエンジニアさんがいると聞き、スタジオを訪ねました。

古賀健一さんは、数々の有名バンドを手掛けるレコーディングエンジニア。ご自身のレコーディングスタジオ「Xylomania Studio」で、TRIAD-ORBITのスタンドをたくさん使用してくださっています。古賀さんに、TRIAD-ORBITスタンドの魅力をうかがいました。

 
 


■Xylomania Studioについてご紹介いただけますでしょうか。

Xylomania Studioは(シロマニアスタジオ)2006年に独立してフリーランスになるタイミングと同時に設立したレコーディングスタジオです。2020年の12月からDolby Atmos仕様ののPMC9.1.4チャンネルのミキシングスタジオとして稼働しています。部屋の数としては、サラウンドミキシングルームと、もう一つレコーディングルームの2つがあります。もともと、ステレオ仕様のコントロールルームとして使っていた部屋が録音ブースになり、今はダブルコントロールルームのような形式になっています。

実は、まだ改修は途中段階で完成はしていません。第1期工事がもうすぐ終わって、第2期工事は年内中に着手できたらと考えています。バンド録りの仕事が多く、ドラムとベースは同時に鳴らせるようにしておきたいと考えているので、もう一つの部屋もバージョンアップすることを目指しています。現状はDolby Atmosの仕事ができるようになっています。個人のスタジオなので、トライ&エラーを繰り返しながら出来上がっていく、永遠に完成しない家みたいになっていますね。

Recordingroom_Xylomania-Studio
レコーディングルーム
TRIAD-ORBITスタンドが林立している

機材の量は大幅に増えました。ライブレコーディングのようにスタジオ以外の場所でレコーディングをする機会が元々多かったので、外に持ち回れるセットアップもしっかり用意しています。そうすると、ケーブルやスタンドもスタジオとは別に必要となるわけです。マイクプリも、このスタジオ用とは別に32チャンネル分を用意しています。わざわざこのスタジオの機材をバラして持ち運ぶとトラブルの元になるので、機材を所有しておくことにも意味があると思っています。ドラムセットやギターアンプも数式持っていますし、スタジオレコーディングにはあまり出番がないと思われるボーカルのハンドマイクも一通り揃えています。そのおかげで、スタジオ設計から楽器や機材の相談を受ける機会もあります。先日は、ライブに適したマイマイクを試すために、ここにお越しいただいたアーティストさんもいました。自分自身も知らない機材に出会えるので、大変勉強になっています。

■TRIAD-ORBITの製品を使い始めたきっかけを教えてください。

ちょうどこのスタジオを作る時に、ボーカルマイク用のスタンドを探していました。重たいマイクでも支えられるしっかりした作りで、かつ予算内に収まるものを望んでいました。スタジオでよく起こることですが、スタンドの経年劣化によって可動部がしっかり固定されないことがあります。せっかくOKテイクを録ったにも関わらず、実際はスタンドがお辞儀してマイクが楽器に当たっていた、全く違う方向を向いていた、という問題があります。これはプロとして絶対避けたいです。TRIAD-ORBITを初めて見たときに、「これだ!」とピンと来たんですよね。それで、すぐにT2とT3の2本を購入しました。

T2

■TRIAD-ORBITを使ってみて、ご自身のお仕事に良い影響はありましたか?

まず、ライブレコーディングの話になりますが、「しっかりしているけど持ち運びができる」ことがとても気に入っています。ライブレコーディングの現場では、どうしてもスタンドを立てることが難しい状況にしばしば直面するのですが、TRIAD-ORBITのクランプアタッチメント(IO-C)を使うことで、スタンドを置けない場所へのマイク設置が可能になるんです。

また、少し高い位置にマイクを設置しなければならない時に、普通のマイクスタンドでは不安定になりますが、TRIAD-ORBITは重量があるので高い位置にもセッティングができます

ウェイトバッグ(GB-3)もありますよね。そのような、外での現場ではTRIAD-ORBITがカメラにも使われているのを良く見ます。アダプターの種類が豊富に用意されているので、みんなこういうスタンドを探していたんだな、というのがよくわかります。
IO-C
IO-C クランプアダプター

GB-3
GB-3 ウエイト
Recordingroom_stereo-mic  
T2 スタンド+OM ブーム
サイドアドレスのリボンマイク×2本とステレオバーを高い位置でしっかりと固定

ドラム録りのシチュエーションで非常に効果が高いと思っています。狭いブースでドラムにマイクを立てるのって結構大変なんですよ。場合によっては、スペースがないためにマイキングをあきらめなければならないことがありますし、狙いたいポイントにマイクが届かないこともあります。TRIAD-ORBITは自在にブームやアタッチメントを組み合わせられるので、例えばシンバルスタンドなどにクランプさせることで、スペースのない場所でもマイクの設置が可能になります。この柔軟性がとても気に入っています。

Recordingroom_drum1+d
Kick & HT Set
Recordingroom_drum2+d
Hat & SN top & Btm Set


drum-set
最近は、1つのポイントにマイクを2本、3本立てるのが当たり前になりつつなるので、TRIAD-ORBITの1本のスタンドで複数のマイクをまとめて立てられるのは良いですね。例えば、スネアの高さを上げ下げしたり、キックのヘッドを張り替えたりと、急にマイクを移動させなければならない時があるのですが、TRIAD-ORBITならスタンド一つにまとまっているのでマイクの位置をすぐに移動できるし、置き直した後も微調整だけで済むので楽ですね。スネアとキックはマストで使っています。

同じように、ギターアンプのキャビネット収音にも便利だと思いました。例えば、キャビネット録音で2本のマイクを立てるとして、進行によってキャビネットが次から次へと変わることがありますが、TRIAD-ORBITのスタンドセットならば複数のマイクをサッと動かせるので、作業効率があがるだけでなく、マイクの位置関係を崩さずに簡単にセット替えができます。本当に楽させてもらっています。作業にかかる時間短縮につながるという点で、誰にでもオススメができます。

ドラムのマイキングって本当は結構面倒臭いんですよね。例えばオンマイクで12回線、アンビエントを入れて16回線を使うとき、普通のマイクスタンドを使うと16本は必要になります。楽器構成が複雑になればなるほどスタンドの必要本数も増えますし、立てるスペースや狙いどころもシビアになってきます。しかし、TRIAD-ORBITを使うことによって、1本のマイクスタンドに複数本のマイクを付けることを大前提に考えられるので、結果として実際に必要な本数が半分近く減ります先日、某アーティストのプライベートスタジオデザインに携わる機会がありました。マイクスタンドの構成は、なるべく最小限の本数で、シンプルにカッコよくしたいと要望があり、全てのスタンドをTRIAD-ORBITで揃えた結果、とても満足度の高い仕上がりになりました


■TRIAD-ORBITを使ったおすすめのセッティングをご紹介いただけますでしょうか。

▼O2Xデュアルブームを使ったスネアマイキング
スネアのトップとボトム。これはめっちゃオススメです! O2Xデュアルブームを使って1本のスタンドに対して2本のマイクを立てると、スネアのトップとボトムの両方から狙うことができます

Recordingroom_snare
上記「Hat & SN top & Btm Set」を
スネアドラムのトップとボトムに

左の画像、右上の
IO-FLXの先は・・・ 
Recordingroom_highhat
ハイハットシンバルを狙う
ペンシルマイクへ


▼ディスプレイやタブレット端末の設置
意外とディスプレイマウントが便利で重宝しています。僕らはなるべくディスプレイの角度を低くしておきたいので、背面のVESA規格マウントにIO-VMを付けて設置することが多いんです。そのほうがフレキシブルに動かせて楽なので。
IO-VM
 ↑
IO-VM
VESA規格対応マウント金具 
Recordingroom_desk
↑ 
IO-VM+OA+IO-RA+SS-IOGCを組み合わせ、机にモニターを設置
最近だとドラム奏者がiPadのようなタブレット端末を持ち込むことがあります。タブレットを演奏者の目線に近い場所に置くためにiOrbitを使っています。
iORBIT
 ↑
iORBITを使用した
タブレットの設置

▼O2XYとIO-FLXの組み合わせ
キックドラムの収音では、胴鳴りとホールで狙いたい場所が少し違います。また、その日の楽器によってホールの位置がどこなのかわからないことが多いんですよね。右なのか左なのか、下なのか真ん中なのか。どの位置でもフレキシブルに対応できるようにO2XYを使って、片方のアームにIO-FLXを付けています。IO-FLXはギターアンプにも使っていますし、強度も十分で理にかなったパーツだと思います。結構気に入っています。

 Recordingroom_bassdrum
↑ キックドラムの収音
Recordingroom_GuitarAmp
↑ ギターアンプの収音 


▼IO-VECTORミニDecca Treeセット

クラシックの外録では、ミニ
Decca Treeのセットを持ち運びまIO-VECTORミニDecca Treeセットす。お手頃なコストです。また、アームに「cm(センチメートル)」表示が刻まれていて助かります。小ホールなどの小さい編成を録る時に使っています。

 IO-VECTORミニDecca Treeセットを使用し、Dolby Atmos立体音響で録音した作品
『僕らのミニコンサート』
Dolby Atmos®の高音質と4K映像で収録された日本屈指のオペラ歌手たちの歌と東京フィルのコンサートマスター近藤薫を中心とした弦楽五重奏を楽しめます。
(2022年4月25日 23:59まで配信)



■今後TRIAD-ORBITに期待することはありますか?

この度、販売開始されたSM-1スピーカーマウントはとても興味があります。僕はDolby Atmosの仕事に取り組んでいますが、特にスピーカーの設置に気を遣います。角度のズレが生じていないかどうか定期的に確認する必要がありますし、長く使っていれば振動によってズレることもあります。SM-1の可変機構にはあらかじめ角度が刻まれているので、スピーカー設置の時に目安になり助かります。ぜひ使いたいと思っているのですが、このスタジオには少しサイズが大きかったので、もし今後一回り小さいコンパクトなモデルが出れば導入してみたいです。もしくは、新たにスタジオを作る時は、SM-1のサイズをあらかじめ設計に織り込んでおくことで、色々クリアになると感じます。
SM-1スピーカーマウントシリーズ

これは、一度実験をしてみたいことですが、重たいマイクスタンドの効果について知識を深めておきたいです。マイクスタンド自身が軽量だとどうしても揺れが生じます。床が揺れればスタンドも揺れる。スタンドが揺れればマイクにも揺れが影響する。ということは、多少なりとも位相の乱れなどに影響があるのではないか、と推測しています。そのような影響を抑えるために、なるべくサスペンションを使うようにしていますが、もしかしたらスタンドの重さも音質に関係があるんじゃないかなと思っています。

実際に、TRIAD-ORBITを使うとキックの音の締まりが良くなったというか、太くなった印象を受けました。はっきりとわからないことなので、一度軽いスタンドと重いスタンドで検証してみたいですよね。重さだけじゃなく、例えばスタンドの太さとかも影響があるのではないでしょうか。気になり始めると大変なことになっちゃいますが、それでも、スピーカースタンドで音質や解像度が変わったという話は良く聞くので、マイクスタンドでも音が変わるというのは、切り口としては間違いではないと思います。もちろん、揺れを抑えるためにウェイトを追加することも解決策の一つですよね。特に、繊細な楽器や歌の収音には当てはまりやすいと思います。

TRIAD-ORBITは色々なアタッチメントやアクセサリーが豊富にあるので、どんな機材にも対応できます。付けられない機材が思い浮かばないですね。完璧だと思っています。今後も周りの人におすすめしたいと思います。



古賀さんプロフィール写真

古賀 健一 Kenichi Koga レコーディングエンジニア。

青葉台スタジオに入社後、2014年フリーランスとして独立後、Xylomania Studioを設立。2020年DolbyAtmos対応スタジオに改修。
これまでにASIAN KUNG-FU GENERATION、ichikoro、Official髭男dism、D.W.ニコルズ、チャットモンチーのバンドサウンドからクラシック、映画音楽などの幅広いジャンルに関わる。
また、商業スタジオやミュージシャンのプライベート・スタジオの音響、機材コーディネイトアドバイスも手掛ける。
『Official髭男dism ONLINE LIVE 2020 – Arena Travelers –』の特典Blu-rayをDolby Atmosで収録。
国内最大級のオーディオ&ビジュアルアワード『VGP2021 SUMMER』企画賞を受賞する。